2014年12月02日

インターステラー(ネタバレ注意)

公開後1日でネタバレしてしまい、いささか見る気がそがれていんたんだが、そんな自分に鞭打って見に行ってよかったと思える映画だった。

Twitterでつぶやいた人はこれくらいなら大丈夫と思っていたのだろうが、本当にネタバレせずに感想を語れない映画なのでtwitterでは沈黙してこっちに書くよ。つまりがっつり内容について語っているので、未見の人はこれ以降読まないでください。

ストーリーはわりと単純で、トレイラーで見たそのまんま。植物が次々と疫病で絶滅し、食糧不足と二酸化炭素の増加という危機に直面した近未来を舞台に、移住に適した惑星を探すべくわれらがマコたんが宇宙へ旅立つ。果たして惑星は見つかるのか?マコたんは娘と交わした帰還の約束を果たせるのか?

そもそもタイトルが「インターステラー」なんで、移住先が太陽系内じゃないのは明らか。なので、トレイラーを見た時点で−

地球にいちばん近いアルファ・ケンタウリでも4.5光年ちかい距離がある。てことは人口冬眠?そもそもそこに居住可能な惑星があるなんて保証ないよね?まさかいきあたりばったりに探すの?そんな悠長なことしてたら間に合わなくね?間に合ったとしても娘は死んじゃってるわな?見つかったとしても、みんなでどうやって移住するの?探してる間に大型船を建造?みんなバイナリーデータ・ヘヴンにアップロード?

−というさまざまな疑問がわきあがった。その結果、脳内委員より「移動の仕方」「惑星の探し方」「帰還の仕方」「移住の仕方」という4つの課題を検討する動議が提出された(されないw)。

で、たぶん3つめの「帰還の仕方」がいちばんキモなんだけど、公開された途端に「あんなふうに戻ると思わなかった。2001年意識してる」みたいな感想が続々とTLに押し寄せ、「あーそうですか…マコたんは高次生命体と接触し、あちらの世界に引きあげられてスターゲイトをくぐるのですね…」とオチがわかってしまったのだ。そしてこれを先に知っていると、冒頭の幽霊も高次生命体になったマコたんって察しがつきますわな。こういうことをなにげなく呟いたみなさん、それもう完全にネタバレだから(泣)

まあ結論から言うとマコたんはスターチャイルドにはならず人間のまま戻ってくるし、検討課題1,2,4の解明も楽しめるし、なにより人間ドラマとして秀逸なので、検討課題3の答えがあらかじめわかったくらいでつまらなくなるような浅い作品ではない。それでも、ああ、あの記憶を消すことができれば…と悔やまれるのだった。

さて、映画はインタビューに答え、昔語りをする老人の声から始まる。その時点で人類は生き延びたことが視聴者に伝えられるので、あとは How?だけに集中していればいい。ここらへんは親切設計。

移動手段がワームホールとかご都合主義だなおい、て思うが、実はそれには理由があった(タイムパラドクスは置いといて)と判明するし、惑星を求めて単独でワームホールの向こうに旅立った10人の先遣隊の勇気は胸をうつ。絶望的な状況を知らされぬまま、自分たちを拒絶した大地から最後の恵みを得ようと格闘する農夫たちには憐れみを感じる。

幼い娘のマーフに自分が旅だつ理由を語れないマコたん。マーフとの別れのシーンより、「10歳の娘に、お前は死にかけてるなんていえない」と涙するシーンのほうが感動的だった。ただ、NASAの人が車を返しにくるの遅すぎないか。あの状況では車ないと生活できんだろ。まさかマコたん、トラックで出かけてったあとすぐロケットに乗せられたのか。

ロケットの打ち上げシーンの轟音はすばらしく、IMAXだとせりふが聞き取れないほどらしい。モーターレースを生観戦した人ならエンジン音がどれだけうるさいものかわかるだろうし、監督としても意図的にそれくらいの音を意識したのだろう。それはもちろん、宇宙空間の音−というか無音−と対比させるために違いない。

私がとくに気に入ったのは宇宙船の構造。遠心力で重力を作るために回転するんだけど、映像では縦に回ってるんで、輪が転がってるみたいに見えてビジュアル的にものすごく可愛いのだ。小さいわっかが土星面を横切っていく。ころころころ。あれは萌えたですよ。

出発後は宇宙でのミッションだけを描いてもよかったかもしれないが、監督はあえて地球で何が起こっているかも示す。ビデオレターでのやりとりで時間の流れを表すあたりは簡潔でよかった。また、マーフが物理学者として計画の責任者ブランド教授と働くようになってからは、移住計画の進捗がわかるようになる。

重大なネタバレをしてもなお最後まで楽しめたのは、この移住計画が重要なファクターとして後半のストーリーを引っ張っていくからだろう。家族を救いたいマコたんにとっては、彼らを移住させられないなら探査には意味がない。ブランド教授は未完成のプランA(スペースコロニーをつくって移住)と最終手段のプランB(冷凍受精卵による新規まき直し)を示した上で、あたかもプランAに可能性があるかのような期待を持たせて4人の宇宙飛行士(うち一人は娘のアメリア)を送り出したのだ。

プランA実現のためには重力操作の理論を完成させる必要があった。それなしに巨大な建造物を宇宙に送ることはできない。だがその理論が完成することはないとマコたんが知るのは、先発隊が居住適地と知らせた氷の惑星ホス、じゃない、名もない惑星に降り立って、計画の発案者マン博士と奇跡的な再会をとげたときだった。

重力操作理論を解明するにはブラックホールの特異点の観測データが不可欠だった。天才的な物理学者だったブランド博士はごく早い段階でそれに気づいており、最初からプランB、すなわち1からのやり直ししか人類を救うすべはないとわかっていたのだ。しかしそれを正直に明かせば、誰も移住ミッションには行かないだろう。そりゃそうだ。はるばる別の銀河にまでいって赤ん坊の世話なんかできるか。

そうじゃなくて。

「人類の未来という抽象的なもののために家族や恋人を見捨て、自分を犠牲にできる者などいない。しょせん人類なぞその程度までしか進化していないのだよ。だからブランド教授は嘘をついたのだ。」

太ったマット・デイモンみたいなマン博士は上から目線でマコたんたちにそう語る。ていうか、本当にマット・デイモンだったんだけど気づかなかった。いろいろぱっつんぱっつんだったぞ。

このマン博士、AIロボットを故障したまま放置してるところが見るからに怪しくて、きっとあそこに不都合な真実が隠されているのだろうと睨んだら案の定そのとおり。実は彼が見つけた惑星は生存に適していなかったのだが、メサイア・コンプレックスと生存本能に突き動かされた博士はあろうことか嘘のメッセージを送ってマコたんたちをおびき寄せたのだ。

「オレが人類を救うんだあ!」とマコたんとアメリアを置いて母船に戻り、一人で第二の地球さがしの旅に出ようとするマン博士だが、天才でもシャトルの操縦はいまいちだったようで母船とのドッキングに失敗してしまう。与圧を確保できないまま強引にエアロックに入る博士。いや、それマズいだろ『火星の人』を読んだことがないのはオノレは!あせる私(意味ない)、あせるマコたんとアメリア、「開けちゃだめー!」という叫びもむなしく博士はエアロックごと吹っ飛ぶ。博士はいいけど宇宙船が!ぴゃー!

映画としては、ここがもっとも緊張が高まったところだったと思う。

最初に地球から出発したときにこのドッキングのシーンを見せてるのが、演出としてうまかった。まさかここでいきなりトラブルとかないよなーと思っていたのだが、2時間くらいたったところでその杞憂が現実のものになるのだった。ころころどころかぐるんぐるん回りながら惑星に引き寄せられる宇宙船にドッキングするのは、ないわーって思ったけど。あそこの演出はちょっとあるまげ丼だった。

プランAが潰えた以上、もはや人類の未来はプランBにしかない。しかしマン博士の惑星に寄ったせいで、最後の惑星−アメリアの恋人、エドマンズ博士が到達した惑星−にたどり着く燃料は残っていなかった。推進力を得るために巨大ブラックホールで重力ターンを敢行するマコたん。「先に進むためには後ろに何か置いていかなくてはならない」、すなわち作用・反作用の法則にしたがって、マコたんはアメリアと冷凍受精卵を乗せた宇宙船を推しだしてブラックホールへと飲み込まれる。

ここでの泣かせ役はAIロボットたち。動いてないとディスプレイがまんなかについたモノリスそのもので、動くときもかなりフシギな動き方をするのだが、急げばアスタリスク*みたいな格好で高速移動もできる。まあ立方体だと格納に余分なスペースをとらないので合理的ともいえる。いつ反乱を起こすんだろうと待っていたのだが忠実なままだった。ちょっとずつ個性があって、TARSはくだらない軽口をたたく海兵隊のロボット、CASEは無口だが、出身は明かされていない。そしてマコたんに従ってブラックホールに落ちたTARSはついに特異点の観測に成功する。

ここからはファンタジーに近いっていうかイベント・ホライゾンの向こうは娘の部屋の本棚の裏だったとかマジwwwきっとクローゼットを開けるとナルニアwwwて笑ってしまったし、ワームホール同様、都合よすぎるよね?と思ったが、実はこれらはすべて未来の人類が過去の人類を助けるために仕組んだことで、マコたんがパイロットに選ばれたのも、物理学者に育ってブランド教授とともに重力操作理論の解明に取り組むマーフの父親だったからなのだ。優秀なパイロットだった彼が先遣隊に選ばれなかったのは、経歴に墜落事故を起こしたという瑕があったためなのだが、それもまた、未来からの干渉で起こされた事故だった。このように映画の序盤で現れた幽霊や、マーフにあげた時計や、なにげなく言及された事故の話が、終盤ですべて繋がって解き明かされていくのは胸がすくようだった。

でも最後は蛇足かな。マコたんあそこで死んだと思っていたので、娘の元へは幽霊として帰ったんだね…よかったね、最後に大事なことを伝えられて…て勝手に〆に入ってたよ。目覚めたところが真っ白な病室だったから「ああ高次の存在が彼のために3次元の環境を…」って納得しかけたんだけど、本当にふつーに現実世界(彼がでかけたときから100年近くあとの)に戻ってきていて、ついに娘との再会を果たすわけである。お父さんて大変…娘との約束は必ず守らなくては、って言ったって、あんな約束まで守らなくちゃいけないなんてすごいプレッシャー…と世界中のお父さんに同情した。

でもクーパー記念館のくだりはなかなか良かった。序盤のインタビュー映像もここにつながってきて、最後のピースがはまった感じ。砂だらけじゃないから「これはオレの家じゃない」ってちょっと不満そうなマコたんが焦げたTARSと再会して修理してるとこもいい。

公開前は「父と娘の愛を描いたヒューマン・ドラマ」みたいなふれこみだったけど、実際にはそういうエモーショナルなとこは少なくて、普通にSFだった。キャラクターへの思い入れよりはストーリー展開や映像を楽しむ映画だと思うし、キャラクターとの距離感が適度で心地よかった。

「父娘の愛」ばかりでこの映画を見てると、死の床で再会したマーフがわりとあっさり父を返したのに拍子抜けするだろうが、あれは早くアメリアを助けに行けという意味だったのだろう。あんな軽装備でたどり着けるのか心配だが、実は盗まれた宇宙艇とTARSは、やがてTARDISとして知られるようになる(嘘)
posted by bluegene at 00:25| Comment(0) | 映画
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